BitteR SweeT StrawberrY
             *
「新城さん、ケイの部屋には来慣れてんだね?何がどこにあるかとか、全部わかってるんだ?」

あたしは、自分の家から持ってきた食材を大きな冷蔵庫に詰めながら、シンクで洗い物をしている新城さんにそう言った。
男の人が洗い物してるなんて新鮮で、後ろ姿を見てると健気に見えて、なんだか可愛い。
新城は、あたしに振り返らないまま、可笑しそうに笑ってこう言った。

「俺だけじゃないよ、うちの店の連中、大抵はケイさんの家のどこに何があるか知ってるし。女の子たちは結構泊まりにきてんじゃないかな~?」

「え・・・・??」

なんだ・・・ケイは、誰でも家に泊めてくれるんだ・・・
ちょっとがっかりしてる自分に気がついて、あたしは、はっとする。
あれ?なんであたしががっかりする必要があるんだろ?
馬鹿じゃないの・・・
あたし・・・
あたしは、なんだかとっても複雑な気分になって、冷蔵庫の扉を閉めようとした時、ふと、目に付いた大粒イチゴのパック。

「あ・・・イチゴ・・・」

「ああ、ケイさん苺好きみたいだよ。なんか、いつも買い置きしてある」

あたしの呟きが聞こえたのか、新城はそう言って、濡れた手をタオルで拭きながらゆっくりとあたしに向き直った。

「ケイ・・・食べるかなぁ?」

「もって行ってやったら?ケイさん、昨日からあんまり何も食ってないみたいだし」

あたしは、その言葉に押されるように、冷蔵庫の中から苺のパックを出して扉を閉めた。
女の子の舌はストロベリーの味・・・・
ふと、そんなケイの言葉が頭を過ぎって、また一人で赤面してしまう。
真っ赤になった顔を新城さんに見られたくなくて、あたしは、うつむき加減になって、そそくさとシンクの前に立った。
水道から水を出して、苺を軽く洗って、目の前においてあったフルーツ皿にそれを乗せる。

「新城さんも泊まってくの?」

新城さんは、あたしの隣でお皿を拭きながら「いや~」と言って首を横に振った。

「さすがにさ~・・・・彼女の手前、泊まれないよな~、今、一緒に彼女と住んでるから。
いくらケイさんが男より男前で、見た目あんなでも、やっぱ女の人だしな~」

なんだか少し残念そうな新城さんの口調に、あたしは思わず吹きだした。

「そうだよね。彼女いたんじゃ、確かにそれは問題になっちゃうよね」

「まぁね~。あ・・でも、まぁ、うちの彼女もケイさんのこと好きだからな~・・・
なんつーか、『ケイさんとこに泊まるなんてずるい!!』って怒られるような気がする・・・」

「え?新城さんの彼女さんも、ケイのこと知ってるんだ?」

「ああ・・・今の彼女、実は、うちのお客だったから。最初は、ケイさんと仲良くなりたくて店に来てた・・・
らしい」

新城さんはそう言って、何故かがっかりしたように肩をすくめる。
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