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その仕草が可笑しくて、あたしは思わず笑った。

「あははっ！そうか、彼女さんが気分悪くなるのは、そういうことなのか！」

「うむ・・・・」

ふぅっとため息をついた新城さんが、健気で可愛いと思った。

「あはは！おかしい！ライバルは他の男の人じゃなくて、ケイとか！」

「いや、あれだよ。ケイさんと付き合う男は、ライバルは男だけじゃなくて女もだから、大変だとおも」

新城さんはそう言って愉快そうに笑うと、言葉を続けた。

「佐野さんとか、実は結構、気苦労耐えなかったんじゃないかな～。
なんか、モデルのスカウトマンみたいな連中もよく来てたしさ、ケイさんのとこには。
あの時から、結構、男にも女にも告られてたみたいだし。
俺はぜってー、当時の佐野さんみたいにクールにはかわせないだろうな・・」

「佐野・・・さん？」

「ああ・・・ケイさんの彼氏だった人。三年ぐらい前に独立して、今は、横浜で自分の店やってるよ。まぁ、佐野さんもスケールのデカイ人だったから、ケイさんとはよく似合ってたかな」

「あ・・・」

あたしは、初めてケイの部屋に来たときに見た、あの写真を思い出した。
あの写真の男の人が、佐野さん・・・なのかな？
ケイとはお似合いの、スケールの大きな人・・・
どんな人だったのかな・・・
ケイの恋人だった、その人は・・・
きっと、あたしなんか比べ物にならないぐらい、大きな世界に生きてる人なんだろうな・・・

「ケイは・・・今、彼氏とかいないのかな・・・」

あたしは、まるで独り言のようにそう呟いて、ハッと口に片手を当てた。
新城さんは、それを普通の質問だと思ったらしく、さらっとこんな答えをくれる。

「いないよ。もう、特定の相手は作るつもりないって言ってたかな・・・・」

「え？どうして？」

「それは、ケイさんじゃないとわからないかな？なんか、女の子とじゃれてるほうが楽しいって笑いながら言ってたけど、まぁ・・・本心ではないと思う。
確かにあの人、女の子好きみたいだけどさ！
たまには男ともじゃれて欲しい～～～っ！マジで！」

それを聞いて、あたしは思い切り笑ってしまった。
冗談めかして言ってるけど、これは結構、新城さんの本音なんじゃないかとあたしは思う。
新城さんは、ジャケットのポッケに両手をつっこんで、玄関の方へ歩きだした。

「さて、じゃ、俺もう帰るから、ケイさんのことよろしくね。店のことは、俺がやっとくから、心配しないで休んでくれって言っておいて」

「挨拶していかないの？ケイに？」
「なんか、さっきから静かだから、寝ちゃったかなって思ってさ。
ほらさ～なんつーか、寝顔とか見ちゃうと変な気分に・・・」

「ぶ！」

冗談なのか本気なのかわからない新城さんのその言葉に、またしてもあたしは吹きだしてしまった。
新城さんは、笑い続けるあたしに振り返って軽く手を振ると、「じゃ、バイトよろしくね」と言って、玄関を出ていった。