BitteR SweeT StrawberrY
「ひ、ひどぉ~~~~い!あたしの苺~~~~~っ!」

「まだ一杯あるだろ?」

ケイは、あたしから奪った苺をもぐもぐしながら、可笑しそうに笑っていた。

「一杯あるけどぉ!一杯あるのにあたしの取らなくてもぉ~~~っ!」

「だって、優子の食べてるやつのが美味そうだったんだもん」

「なにそれ~~~~っ!?」

「幼児か!」

ケイは可笑しくて仕方ないと言った様子でくすくすと笑っていた。
あたしは、顔を真っ赤にしたまま、ほんとに幼児のように拗ねて、じーっとそんなケイを見つめる。
そんなあたしの目の前に、ケイは、自分で摘んでいた苺を差し出した。

「どうぞ」

「ぶっ!あたしは犬ですか!」

「犬は苺食べないだろ?まぁ、たまにはそんな犬もいるかもしれないけど」

ケイはからかうように笑ったまま、あたしの口元に苺を突きつける。
あたしがそれを受け取ろうと手を伸ばすと、ケイは意地悪するようにさっとそれを遠のけてしまった。

「あ!ひどっ!!」

「このまま食えばいいだろ」

「え?!」

「持っててやるから、がぶっといけばいいじゃん」

「ちょ!」

あたしは思い切り照れて、ますます顔を赤くしてしまう。
そんなあたしを眺めるケイは、ほんとに愉快そうな表情で笑ってた。

もう・・
もう!!
ほんとに・・・なんなの!!

ちょっとだけムキになったあたしは、ケイの指が摘んでいる苺にがぶっと噛み付いた。
新鮮な苺の甘い香りが、口の中一杯に広がる。
あたしが噛み付いて、小さくなっていく苺・・・
あたしま「むぅ」っと唸って、ケイにこう言った。

「このまま持ってられたら・・・あたし、ケイの指まで食べちゃうよ!」

「いいよ」

ケイはあっさりそう答えて、イタズラっぽく笑った。

「うぅっ・・・」

まただ・・・
この人、またあたしで遊んでる・・・・っ

新城さんは、ケイが女の子とじゃれるが好きだって言ってたけど、きっとこれも、それの一貫・・・なんだと思う。
そう思うと、何かが悔しい、あたしがいる。
あたしは、悔しかったから、苺ごとケイの指を口の中にくわえて、その指先から、苺を奪ってやった。
ケイは、ますます可笑しそうに笑う。

「いい娘(こ)だ!」

「もう!犬じゃないってば!」

そうやって怒ってるあたしの目の前に、ケイは、もう一個苺を差し出す、そして、思惑ありそうに両目を細めると、いきなりあたしの顎を片手で摘んで、あたしの口の中に苺を押し込めたのだった。
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