BitteR SweeT StrawberrY
【7】~L~
それから、数日が過ぎた頃だった。
おかしなあたしは、ますますおかしなことになりながらも、表面的には平静を装って、黙々と仕事をこなしていた。
週末。
ケイのお店での初バイトを明日に控えて、どことなく浮かれている自分に、あたしはちゃんと気付いてた。
われながら、馬鹿じゃないかと思う・・・
その日、仕事が終わって、会社を出ようとした時、自動ドアの前で、あたしは、聞きなれた声に呼び止められた。
「優ちゃん!」
あたしが、ハッと後ろを振り返ると、そこに立って手を振っていたのは、同期入社で仲の良い角田 美保(かくた みほ)だった。
美保は去年、志望していた秘書課に異動になって、最近では話す機会もなかなかなった。
秘書課は、経理とは違った忙しさがあるから、メールも電話もことごとく減っていたけど、こうやって声をかけられて、あたしは、素直に嬉しかった。
「あ!美保~~っ、久しぶり~・・・っていうのも何か変だね。同じ会社なのに」
あたしが、にっこり笑ってそう言うと、美保もニコニコしながら近づいてくる。
「ほんとだね、同じ会社なのにね!」
あたし達は自然と並んで、人ごみを駅に向かって歩き出す。
「どう?秘書課?もう仕事慣れた?」
「慣れたけどぉ・・・・もうね、ストレス溜まるよぉ・・・先輩たちきつくてさ」
美保は、どことなくしょげた顔をして苦笑いをする。
「ああ・・・・きつそうだね、秘書課は・・・」
「うん。まぁ、志望したのはあたしだから、仕方ないんだけど・・・ちょっとだけ後悔してるかも」
「そっかぁ~・・・・」
「うん。やっぱりね~・・・なんていうか・・・特殊な世界だよ、秘書課」
「女の戦い???」
あたしがそう言うと、美保はおかしそうに笑った。
「あはは!もしかすると、そうなのかもね・・・・
今日はどのブランドのスーツだとか、どこの化粧品だとか、みんなニコニコしながら話してるけど、あれは結局、見栄の張り合いだよぉ・・・ああいうの聞いてると、こっちも、ブランドスーツとか着ないといけないのかなぁとかさ、変なプレッシャーがかかるし。
ちょっとでも失敗しようなら・・・会社の面子を潰すつもりなの?とか・・・
専務じゃなくて先輩に怒られるんだよぉ・・・例え専務が笑って許してくれても、先輩は許してくれないとか・・・なんかさぁ、最近胃が痛いよぉ・・・」
「うわぁ・・・・きついなぁ、それ・・・あたしは絶対、耐えられない・・・」
「きついよぉ・・・」
美保はそう言って、ふぅってため息をつきながら、言葉を続けた。
「でもさぁ、自分で志願したからには、やっぱり、しっかりと仕事はこなしたいじゃない?
重要な業務だってあるし、メールを一通、専務に報告し忘れただけで、とんでもないことになっちゃうから。そういう重要なポジションだから、キリってしないとって、それが責任だからって、頑張ってるよ」
「偉いなぁ・・・・あたし、秘書課なんて考えたことないからな~
なんか、みんな、秘書課は根性と精神力がないと勤まらないから、やめたほうがいいって言うし・・・」
そこまで言って、あたしはハッとした。
みんなが・・・
周りが・・・
止めるから、そんな仕事はしたくない・・・
結局、あたしは、そうやって、周りに左右されちゃう、小さな人間なんだと今更ながらに、思い知らされる。
あたしは、複雑な気持ちになって、苦笑した。
「美保は・・・あたしと違って、チャレンジャーだなって、すごいなって思うよ」
「あはは!急にどうしたの?」
「ん?んー・・・どうしたのかな?ここのとこ、あたし、なんか変なんだ」
「んー?何かあったの?」
「うーん・・・あったと言えば・・・あった?かな・・・?」
「どうしたの?」
「うーん・・・・」
「あ、そうだ、久々に一緒にご飯行こうよ!せっかくだから、ゆっくり話そう!」
「あ・・・そうだね。そうしよっか?」
あたしと美保は、入社当時からいつも通っていた、駅近くのイタリアンカフェへと向かったのだった。
おかしなあたしは、ますますおかしなことになりながらも、表面的には平静を装って、黙々と仕事をこなしていた。
週末。
ケイのお店での初バイトを明日に控えて、どことなく浮かれている自分に、あたしはちゃんと気付いてた。
われながら、馬鹿じゃないかと思う・・・
その日、仕事が終わって、会社を出ようとした時、自動ドアの前で、あたしは、聞きなれた声に呼び止められた。
「優ちゃん!」
あたしが、ハッと後ろを振り返ると、そこに立って手を振っていたのは、同期入社で仲の良い角田 美保(かくた みほ)だった。
美保は去年、志望していた秘書課に異動になって、最近では話す機会もなかなかなった。
秘書課は、経理とは違った忙しさがあるから、メールも電話もことごとく減っていたけど、こうやって声をかけられて、あたしは、素直に嬉しかった。
「あ!美保~~っ、久しぶり~・・・っていうのも何か変だね。同じ会社なのに」
あたしが、にっこり笑ってそう言うと、美保もニコニコしながら近づいてくる。
「ほんとだね、同じ会社なのにね!」
あたし達は自然と並んで、人ごみを駅に向かって歩き出す。
「どう?秘書課?もう仕事慣れた?」
「慣れたけどぉ・・・・もうね、ストレス溜まるよぉ・・・先輩たちきつくてさ」
美保は、どことなくしょげた顔をして苦笑いをする。
「ああ・・・・きつそうだね、秘書課は・・・」
「うん。まぁ、志望したのはあたしだから、仕方ないんだけど・・・ちょっとだけ後悔してるかも」
「そっかぁ~・・・・」
「うん。やっぱりね~・・・なんていうか・・・特殊な世界だよ、秘書課」
「女の戦い???」
あたしがそう言うと、美保はおかしそうに笑った。
「あはは!もしかすると、そうなのかもね・・・・
今日はどのブランドのスーツだとか、どこの化粧品だとか、みんなニコニコしながら話してるけど、あれは結局、見栄の張り合いだよぉ・・・ああいうの聞いてると、こっちも、ブランドスーツとか着ないといけないのかなぁとかさ、変なプレッシャーがかかるし。
ちょっとでも失敗しようなら・・・会社の面子を潰すつもりなの?とか・・・
専務じゃなくて先輩に怒られるんだよぉ・・・例え専務が笑って許してくれても、先輩は許してくれないとか・・・なんかさぁ、最近胃が痛いよぉ・・・」
「うわぁ・・・・きついなぁ、それ・・・あたしは絶対、耐えられない・・・」
「きついよぉ・・・」
美保はそう言って、ふぅってため息をつきながら、言葉を続けた。
「でもさぁ、自分で志願したからには、やっぱり、しっかりと仕事はこなしたいじゃない?
重要な業務だってあるし、メールを一通、専務に報告し忘れただけで、とんでもないことになっちゃうから。そういう重要なポジションだから、キリってしないとって、それが責任だからって、頑張ってるよ」
「偉いなぁ・・・・あたし、秘書課なんて考えたことないからな~
なんか、みんな、秘書課は根性と精神力がないと勤まらないから、やめたほうがいいって言うし・・・」
そこまで言って、あたしはハッとした。
みんなが・・・
周りが・・・
止めるから、そんな仕事はしたくない・・・
結局、あたしは、そうやって、周りに左右されちゃう、小さな人間なんだと今更ながらに、思い知らされる。
あたしは、複雑な気持ちになって、苦笑した。
「美保は・・・あたしと違って、チャレンジャーだなって、すごいなって思うよ」
「あはは!急にどうしたの?」
「ん?んー・・・どうしたのかな?ここのとこ、あたし、なんか変なんだ」
「んー?何かあったの?」
「うーん・・・あったと言えば・・・あった?かな・・・?」
「どうしたの?」
「うーん・・・・」
「あ、そうだ、久々に一緒にご飯行こうよ!せっかくだから、ゆっくり話そう!」
「あ・・・そうだね。そうしよっか?」
あたしと美保は、入社当時からいつも通っていた、駅近くのイタリアンカフェへと向かったのだった。