BitteR SweeT StrawberrY
その人は一瞬黙って、前髪に片手を突っ込むと、また、いきなり、大笑いし始めた。

「あははは・・・・っ!それよく聞かれる!」

「ですよね~・・・・・」

そう答えたあたしの右手を、その人はいきなり掴んで、何を思ったか・・・掌を自分の股間に持っていった。

「ちょっと!!えええええええええええええええええ!?」

思い切りあたふたして、じたばたするあたしに向かって、その人はこう言った。
しかも、すごく愉快そうに。

「ついてな~い」

「っ!・・・・あ・・・・・」

女の人だったんだ・・・・この人。

それにも関わらず、あたしは動揺しまくって手を振り払うと、思わず大声で叫んでしまったのだ。

「口で言えばいいじゃないですか!!!なんてことさせるんですか~~~~!!?」

「いいじゃん別に、恥ずかしがるほどのことでもないし、どうせ同じもんだろ?」

「確かに同じかもしれませんけど・・・・っ!」

「高校生じゃあるまいし、そんな動揺するほどのことでも・・・」

「動揺しますよ!!!あ・・・・そういえば・・・その、助けてくれてありがとうございました・・・」

「このタイミングでお礼なんだ!」

「悪いですか!?」

「いや悪くないけど。なんでそんなイラついてんの?生理?」

ああもう!なんなのこの人!!!

「違います!!でも!助けてもらった限りはお礼いっとかないと・・・・」

「真面目なコなんですね。でも怒りながらお礼とか言われても」

茶化すように、その人はそう言うと、また、さっきみたいに、綺麗な唇で、ほんとに綺麗に微笑んだのだった。

「う・・・・っ」

不覚にも、ドキッとした。
女の人なのに、この男の人のようなスタイルのせいなのか、変にどきどきしてしまう・・・

「あ・・・ありがとうございました。帰ります・・・」

なんか変に照れてしまったので、あたしは、その場を退散しようと、その人に背中を向けた。
そんなあたしに向かって、その人は愉快そうにこう言った・・・

「なぁ、そのチューハイ、一本くれない?謝礼ってことで。一緒に飲んでくれてもいいよ」

ほんとに、なんて図々しい人なのか・・・・とは思ったけど。
助けてもらったのは事実だし、あたしは、もう一度、その人を振り返ると、コンビニの袋に入ったチューハイを一本、その人に差し出した。

その人は、やけに嬉しそうにそれを受け取って「ありがとう」と答える、そして、胸のポケットから煙草を一本だして、唇にくわえてライターで火をつけたのだった。
その仕草を、何故か、あたしは、食い入るように見つめてしまっていた。

あたしの彼も、煙草は吸う。
でも、その仕草をカッコイイとか思ったことはなかった。
なのになんでだろう。
この人は、女の人なのに、男の人よりカッコいい仕草で煙草を吸う。

「あの・・・」

思わず声をかけたあたしに振り返って、その人は、「なに?」と言って笑う。

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