BitteR SweeT StrawberrY
【8】~Ⅴ~
次の朝。
あたしは、妙に意気込んでたのか・・・
出勤の30分も前にケイのお店に着いてしまって、思い切り、新城さんに笑われてしまった。

「優さん、早っ!ほんと真面目だなぁ!」

レジで開店作業をしていた新城さんは、いつもの通りニコニコしながら、事務所の方を指差した。

「とりあえずタイムカード押しちゃっていいよ。荷物は空いてるロッカーに適当に入れておいて」

あたしは、なんだか申し訳なくなって、「は、はい!ほんと、ご、ごめんなさい!」と謝ってしまう。
新城さんはますます可笑しそうに笑うと、こう言った。

「大丈夫大丈夫。30分早く仕事覚えられるだけだから、全然、Okだよ!」

「ぅうっ・・・ありがとございます」

あたしは、そんな新城さんにぺこりと頭を下げて、そそくさと、スタッフオンリーと書いてあるドアの中に入っていく。

そんなに広くない事務所には、まだ誰もいない。
休憩の時に使うだろうソファとテーブル。
そのテーブルの上に、真新しいタイムカードがある。
そこには、ちゃんと、あたしの名前が書かれていた。
あたしは、それを手にとって、デスクの脇に置いてある機械に通す。

新しいお仕事。
なんか、ちょっと緊張してきた。
ストックヤードだから、お客さんと直接話したりはしないけど、なんだかどきどきする。
新入社員で、今の会社に入った時のような、そんな新鮮な気分だった。

「頑張るぞ!」

あたしは、一人で気合を入れて、ハンドバックとジャケットを備え付けのロッカーに放りこむとフロアに出る。
レジの開店作業を終えた新城さんが、ドアの前で待っててくれて、あたしは思わずお辞儀した。

「よろしくお願いします!」

「おっふ!ほんと真面目だなぁ、優さんは!そこまで堅苦しくなくていいのに」

新城さんはおかしそうに笑うと、言葉を続ける。

「もうちょっとしたら、真帆ちゃんと雛乃ちゃんが来るから、そしたら紹介するよ。
まぁ、雛ちゃんには会ったことあるから大丈夫だと思うけど。
マホちーは慣れるまで強烈だから、覚悟してね」

冗談めかしてそう言って、新城さんは、お店の奥にあるストックヤードへと歩いていく。

「え?!きょ、強烈・・・・っ?強烈って・・・そんなキツイんですか???」
あたしは、なんだか不安になって、思わずそんなこと聞いてしまった。

「あはは!いや、そういう強烈じゃなくて!なんていうかな・・・ギャップが強烈かな?」

「ギャ、ギャップ???」

「そそ。ギャップ!面白いよ~なんか独特で」

「面白い・・・のか・・・?」

「相当!楽しみにしといて!」

「え!?あ・・・はい」

「雛ちゃんは、あのままでなんも変わらない子だし。歳が歳だし、性格も性格だから、ジェネレーションギャップ感じて疲れるときもあるけど。素直な良い子だから。
優さん、今日、三時までだっけ?シフト?」

「え?あ、はい、一応は。でも、忙しいようなら手伝いますよ」

「おお!マジで?」

「はい!」

あたしがそう応えると、新城さんはポケットからシフト表らしきものを出して、それを眺めながら言葉を続ける。

「今日は~・・・雛ちゃんが三時まで、入れ替わりでスガくんが来て、マホちーが五時上がり。昼にはケイさんもくるし・・・・五時からはアヤりんもくるんだ。
まぁ、人数は問題なさそうかな」

「新城さんは、今日、閉店までですか?勤務?」

「うーん・・・俺はね~忙しくなければ定時であがるよ。6時に。でも、俺とケイさんは立場的に勤務時間変動多いからさ、この時点ではなんとも」

新城さんはそう言って笑うと、ストックヤードの鍵を開けて、重いドアを押し開けた。
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