BitteR SweeT StrawberrY
あんまりにも、真っ直ぐに見つめるから、あたしの心臓は、ますます大きな音を立てるけど…
あたしは、そんなケイの眼から、視線を逸らすことなんて…できなかった。

どうして…
こんな表情(かお)するんだろう…?
こんなに優しくて…
こんなに淋しそうな…
ケイは、あたしが持ってないもの…
沢山、持ってるのに…
どうして…

あたしは、何だか胸が痛くなって、思わず、髪を撫でてるケイの手を…ぎゅうっと握ってしまった。

「どう…したの?なんか…」

そこまで言いかけた時、ケイがぎゅってあたしの手を握り返してくれて…あたしは、ハッとする。
ケイは、ただ、あたしを見つめて、柔らかく笑った。

「いい歳して…優子はほんとにスレてないな?おまえは可愛い…」

「っ!?」

「可愛いとか・・・言わないでっ!」って、あたしは心の中で叫んだ。
あたしの心拍数は跳ね上がってしまって、もう、その場から逃げ出したいぐらいだった。

可愛い・・・とか、言われたら、期待しちゃうじゃない・・・
もしかしたら、ケイもあたしのこと、あたしと同じように思ってくれてるんじゃないかって・・
期待しちゃうじゃないっ!
ケイは、女の人なのに・・・
大体、女であるあたしが、女であるケイに、こんな気持ちになる方が絶対おかしいんだ・・・

あたしは、ドキドキする鼓動を必死で落ち着けようとする。
でも、全然、治まらなくて、なんだか、何にも言えなくなって、いつものように、真っ赤な顔で唸ってしまった。

「ぅうっ・・・」

そんなあたしを見て、ケイは、また、おかしそうにくすくす笑う。
そして、そっとあたしの手を離すと、すーってあたしの耳元に唇を近づけてこう言った。

「戻るよ。間違っても、上にある荷物取ろうとして棚に登ったりするなよ。
全部倒れるぞ。おまえ、そういうことやりそうだから」

「ちょ!な、なにそれ!?」

この体制で言うような事じゃないじゃん!!とか思いつつ、耳元にかかる息で、あたしは小さくぶるって震えてしまう。
だけど、あたしは、精一杯の文句をケイに言ってみた。

「もぉ!それは!あたしを馬鹿にしてるんですか!?そんなことしません!
子供じゃないんだから!!」

「まぁ・・・確かに子供ではないよな・・・」

可笑しそうに笑ったケイは、耳元にあった唇をふっとあたしの顔に近づけて、真っ赤になってるあたしのほっぺに、小さくキスした。

「・・・っ!」

思い切り硬直するあたしを、ケイは、おかしくてたまらないって言う顔で見つめてくる。

「じゃ、よろしく。休憩はマホと行ってくれ、呼びにこさせるから」

そう言って、ケイは、くるってあたしに背中を向けると、そのまま、ストックヤードを出ていってしまった。
あたしは、ほっぺに残るケイの唇の柔らかい感触を確かめるように、思わず、そこに手を当てて、真っ赤な顔のままぽかーんと立ち尽くしてしまう。

あたし、絶対、遊ばれてる・・・・っ!
ケイは、あたしの反応を見て、絶対に面白がってるんだ・・・っ!

「もぉ、も・・・もぉ!!ケイの・・・馬鹿っ、ばかぁ!!」

急に悔しくなったあたしは、思い切り拗ねて、ガチョウみたいに唇を尖らせてしまった。
だけど、こんなに悔しいのに、あたしの胸のどきどきは、全然、治まらなくて、そんな自分がますます悔しくて・・・

でも・・・
なんだか、嬉しいって思ってる自分もいて、ほんとに重症になってきたなって、自分自身に呆れかえってしまった・・・

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