BitteR SweeT StrawberrY
きょとんとするあたしの目の前に、ミルキーピンクのカクテルが差し出される。
可愛い色のカクテル。
それを見たケイが、ふと、こんなことを言った。

「優子は、そのカクテルみたいだよな」

「なにそれ??」

あたしは、グラスを手に取って、ちょこっとカクテルを飲んでみた。
お酒とは思えないほど甘くて、ほんのりと、ストロベリーの香りがする。
だけど、すごく美味しい。

「これ、甘くて美味しい!って、それ・・・まさか、あたしが甘々のおこちゃまって言ってるの??」

あたしがそう言うと、ケイはからかうようにくすくすと笑った。

「それ、口当たりいいからってがぶ飲みするなよ。あとでひどい目にあうぞ」

「そんな飲み方しないよぉ!」

「優子ならやりそうだと思ってさ」

「しないってば!もぉ・・・っ、そうやって、あたしをからかってばっかり!
おもちゃですか!?」

「それに近いものはあるかな?」

「ひど!!」

「冗談だよ」

ケイは可笑しそうに笑った。
あたしは、「うぅっ」って唸ってから、もう一口、スノーフェアリーを飲んでみる。
拗ねてるはずなのに、そのカクテルがあまりにも甘くて、ミルキーでほんとに美味しくて、これがお酒だってことに、変な幸福感を覚えてしまう。
その時、ふと、あたしは思ってしまった。

まさか、甘くて美味しくて、だけどお酒ってこの幸福感が、あたしのようだってこと、とか?

「・・・・・」

いや!
ありえない、絶対それはありえない!
きっとこれは、あたしの都合のいい勘違いなんだ。
あたしって、馬鹿だなって、つくづく思う。
そんな訳、あるはずもないのに・・・
今のあたしは、ほんとにどうかしてる・・・

「ねぇ・・・ケイ?」

「ん?」

「えと・・・・」

「なに?」

「んー・・・・」

「ケイはほんとに、あたしのこと・・・どう思ってるの?」って、思わず聞こうとしてして、また、一人で赤くなった。
でも、寸前のところで勇気が足りなくて、あたしは、スノーフェアリーのミルキーピンクを見つめながら黙りこんでしまう。
少し間を置いて、誤魔化すように笑ったあたしは、真帆ちゃんの話しを切り出してみた。

「今日、真帆ちゃんに自己紹介してもらった」

「うん」

「聞いたよ、真帆ちゃん、いじめられてずっと、引きこもってたんだね」

「あぁ・・・そうだな」

「雑誌で見たケイに会いたくて、練馬から自転車でお店まで来たって・・・すごいなって、思う。
すごく勇気があるなって・・・
あたしには・・・・きっとできない、そんなこと」

「どうして?」

「あたし・・・・勇気がないもん」

「でも優子は、今、少しだけ勇気出してるだろ?」

「え?」

「目標欲しいって言ってただろ?」

「う、うん」

「目標探すってさことはさ、つまり、新しい何かをやってみたいってことだろ?」

「うん」

「今まで居た世界から少しだけ出て、新しい何かを探そうって思うのは、勇気と違うのか?」

ケイはそう言って、紅色のカクテルを一口含むと、やけに穏やかに笑いかけてくる。
その笑顔を見たら、なんだか、急に、かーって顔が熱くなって、あたしは、思わずケイから視線を逸らしてしまった。

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