BitteR SweeT StrawberrY
あたしの胸はぎゅって痛くなる。

「ケイ・・・・」

唇が離れた時、あたしは、それこそ子猫が鳴くみたいな声で、ケイの名前を呼んだ。

「ん?」
ケイは、いたずらっぽい眼差しのまま、あたしのほっぺに張り付いていた濡れた髪、そっと指先で払う。

「ん・・・あの・・・」

「どうした?」

「・・・えと・・・」

「んー?」

「あたし・・・」

ケイはくすくすと笑いながら、言葉を出すのを躊躇うあたしをそっと抱き締めた。
「ぅう・・・」

あたしは、顔を赤くしたまま、次の言葉を出せずに、ただ、ケイにほっぺに、自分のほっぺをすりすりと摺り寄せるだけだった。

言えないよ・・・
やっぱり言えない・・・
だって、おかしいもん・・・
女が女の人を、男の人を思うみたいに・・・
好きになってしまったなんて・・・
言えない・・・

「うっ・・・あの・・・」

あたしは、なんだか切なくなってきて、涙目になってきて、子猫みたいな声で、思わず、こう言ってしまった。

「もう、一度・・・キス・・・し・・・て・・・」

ケイは、くすくすと笑って、両手であたしの頬を包むと、照れまくってうつむいたあたしの顔を、まっすぐに見つめた。
そして、ちょっとイタズラっぽい声でこんな答えを返してくる。

「たまには、優子からしてみれば?」

「っえ!?あ・・ん、えと・・・っ!」

カーって顔が熱くなる。

「うぅ・・・っ」

あたしは、少しの間躊躇って、小さく震えながら・・・どきどきしながら、自分の唇を、ケイの柔らかい唇に押し当てた。
自分から、誰かにキスしたことなんて、ほんとに、今までなかったのに。

あたし、何やってんだろ?
もぉ・・・あたし、絶対おかしいんだ!
ケイの唇は柔らかい。
苺を練りこんだ生クリームみたいに柔らかくて、甘くて・・・
この唇が、あたしの体に触れてくれると、嬉しくて、恥ずかしくて・・・
そのたびに、あたしは、どんどん、ケイのことを好きになってしまうんだって、そう思った。

「優子は可愛い・・・おまえといると、なんか和む」

そっと唇を離すと、ケイは、あたしの耳元でそんなことを言った。
あたしは、どきっとして、思わずそう言ったケイの顔を見つめてしまう。
ケイは、すごく優しくて穏やかな表情で微笑していた。

照れすぎて何も言えなくなって、うつむくあたし。
そんな顔して見つめられたら、あたし、また、変な期待をしちゃうじゃない。
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