BitteR SweeT StrawberrY
「ちゅっちゅっちゅって・・・三回、軽いやつを・・・
なんか、もうそれで、満足しちゃって、あたしのことどう思ってるか、聞けなかった・・・」

「おふ!そんな・・・!
なんて異文化的香りがするちゅー・・・!
が、外人ですか!?」

「違うよ!日本人だよ!」

「だよね!」

「う、うん・・・・」

「おぉ、なんかあたしまで、ときめいてきたぞ!」

「ど、どうして!?」

「うーん・・・ずっと、仕事に明け暮れてたから、今、彼氏いなくてさ。
そんなこと聞くと、あたしも、また恋とかしちゃいたくなる!」

「そ、そうなんだ?でも・・・・なんか、美保らしい!」

あたしは、可笑しくなってくすくすと笑ってしまう。
美保は、得意そうな顔つきをして、三度くふふって笑うと言うのだ。

「その人さ~・・・多分、優ちゃんのこと嫌いじゃないと思うよ!
むしろ、結構気に入ってんじゃないかなぁ?」

「え?!な、なんで??」

「だってさぁ・・・例えば、優ちゃんのことなんとも思ってなければ、普通は、断ると思うの。そういう気持ちは嬉しいけどとかなんとか言って・・・
で、もしその人が、めっさ遊び人で、遊んでやろうって思って目を付けてた女に、本気で告られたら、絶対に、何かこじつけて逃げると思うのよね。
でも、答えの変わりにちゅー三回とか・・・・やることがお洒落すぎry」

「え?!言いたいとこはそこなの!??」

「違うけど!!」

「あははっ、だよね?」

「だよだよ!親愛の印って感じするんだよね~そういうちゅーってさ。
『今は答えられないけど、僕は、すごく君を気に入ってるよ~!』的何かのちゅーな気がする。だってさぁ・・・・嫌いな奴にちゅーとかしないよね?普通?」

「う・・・うん」

「その人、彼女いるの??」

美保は、あたしの好きな人が女の人だなんて、まだ知らない。
とても言えないよね・・・
さすがに・・・
あたしは、ちょっとだけ複雑な思いになりながら、誤魔化すように笑ってこう答えた。

「いないって、聞いたかな?本人からじゃないけど」

「そぉかぁ・・・・ぐふふっ、きっと、もう一押しだな・・・」

「ん?何が?」

「もう一押しすれば、げっとぉ!かもって話し」

「そ・・・そうかな?」

「そうだよぉ。その人、絶対、優ちゃんのこと悪く思ってないよ!
だからさぁ、がんばっちゃいなよぉ~!
そっちの人げっとしてから、村木さんのことは考えればいいよ~」

「うっ・・・そ、それもひどいな・・・・っ
っていうか、既にあたし、大ちゃんにひどいこと・・・してるよね・・・」

あたしの胸に、罪悪感のトゲがちくってささって、あたしはふぅってため息をついた。
美保は少し考えこんで、にこっと笑うとこんなことを言う。

「彼女の気持ちを、繋ぎとめておけない男だって悪いよ!
そういえば、村木さん、今日は?」

「出張だって。明日帰るってメール来てたよ」

「あれ?この間北海道行ったばっかりじゃないの?また出張なの?」

「うん。今度は九州って」

「ふーん・・・・なんか、遠距離出張って、そんな多いのかな?」

「多いんじゃないの?ここ一年ぐらい、なんか、いつもそんな感じだよ。
きっと、大きな商談とかまかされてるんだと思うけど・・・」

「ふーん・・・・」

美保は、なにやら勘ぐったような顔つきをして、しばらく何かを考え込んでた。
あたしは、美保が何を考えているのかさっぱり見当がつかなくて、思わずきょとんとしてしまう。

「どうしたの?美保?」

「んー・・・?うん、ちょっと・・・まぁ、いっか」

「なにが?」

「ちょっと得意の、おせっかい癖が出そうになっただけ!大丈夫!」

「え???」

にっこり笑う美保の顔を、あたしはまじまじと見つめてしまう。
美保は、ぶんぶんと首を横に振って「気にしない気にしない!」とだけ答えただけだった。



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