BitteR SweeT StrawberrY
*
「今度、うちの店にも遊びにきたら?苺猫ちゃん」
佐野さんは、冗談ぽくあたしにそう言って名刺を渡すと、新城さんと真帆ちゃんに軽く挨拶してから、ケイのお店を出て行った。
閉店後の帰り道。
あたしとケイのマンションは隣同士、もちろん、帰る道順も一緒。
最寄駅で降りて、あたしはケイの隣を歩きながら、いつもよりも無口になっていた。
電車の中でも、無口だったから、あたしの様子が変なことぐらい、ケイも判ってるみたいだった。
だけどケイは、ほんとに、いつもと変わらない態度で、ごく自然にあたしの隣を歩いている。
『パートナーでライバルで恋人・・・もう一回、そんな関係やってみたくなったんだよ。
1ナノぐらい、おまえにもそう思って欲しい』
あたしの心の中に、さっき、佐野さんがケイに言ってたその言葉がひっかかっていて、あたしは、ほんとにいたたまれなかった。
ケイは・・・
あの時・・・
なんて、答えるつもりだったんだろう・・・
それを聞こうか、聞くまいか、ずっと迷っているあたし。
もし・・・
あの佐野さんの言葉に、ケイが、前向きに応えるつもりだとしたら・・・
あたしは・・・
あたしは・・・
あたしのこの気持ちは・・・一体どうなってしまうの?
そう考えるだけで、あたしの心は、ざわざわってざわめいて、不安になって、切なくなって、もう、壊れてしまいそうだった。
こんな不安な気持ち・・・・いままでの恋愛では、全然経験したことなかった。
痛くて、苦しくて、なんだか悔しくて・・・
ケイは女の人なんだから、男の人と付き合う方がごく自然だし、それが普通のことなのに、それが現実になってしまったらと思うと、あたしは、息が止まるほど苦しい。
苦しすぎて、心がズキズキして、泣きたくなる。
人通りがほとんどない通りに、あたしとケイの二つの足音だけが響いていく。
あと、もうちょっとでマンションに着いてしまう・・・
やだよ・・・
ここで別れたくないよ・・・
こんなズキズキして苦しい気持ちのまま・・・
離れたくないよ・・・
そう思った時、あたしの唇は、何の意識もしないうちにケイを呼んでいた。
「ケイ・・・」
「ん?」
ケイは、コートのポッケに両手を入れたまま、いつもと変わらない様子で、あたしを見る。
あたしは、うつむいて自分の足先を見つめたまま、ほんとに、子猫が鳴くみたいな小さな声で、こう聞いてしまった。
「あの・・・あの人・・・」
「ん?ああ、ガクのこと?」
「う・・・うん・・・・あの・・・」
「うん?」
「あの人って・・・・ケイの部屋ある写真に写ってた人、だよね?」
「そうだよ」
ケイはさらっとそう答える。
「今度、うちの店にも遊びにきたら?苺猫ちゃん」
佐野さんは、冗談ぽくあたしにそう言って名刺を渡すと、新城さんと真帆ちゃんに軽く挨拶してから、ケイのお店を出て行った。
閉店後の帰り道。
あたしとケイのマンションは隣同士、もちろん、帰る道順も一緒。
最寄駅で降りて、あたしはケイの隣を歩きながら、いつもよりも無口になっていた。
電車の中でも、無口だったから、あたしの様子が変なことぐらい、ケイも判ってるみたいだった。
だけどケイは、ほんとに、いつもと変わらない態度で、ごく自然にあたしの隣を歩いている。
『パートナーでライバルで恋人・・・もう一回、そんな関係やってみたくなったんだよ。
1ナノぐらい、おまえにもそう思って欲しい』
あたしの心の中に、さっき、佐野さんがケイに言ってたその言葉がひっかかっていて、あたしは、ほんとにいたたまれなかった。
ケイは・・・
あの時・・・
なんて、答えるつもりだったんだろう・・・
それを聞こうか、聞くまいか、ずっと迷っているあたし。
もし・・・
あの佐野さんの言葉に、ケイが、前向きに応えるつもりだとしたら・・・
あたしは・・・
あたしは・・・
あたしのこの気持ちは・・・一体どうなってしまうの?
そう考えるだけで、あたしの心は、ざわざわってざわめいて、不安になって、切なくなって、もう、壊れてしまいそうだった。
こんな不安な気持ち・・・・いままでの恋愛では、全然経験したことなかった。
痛くて、苦しくて、なんだか悔しくて・・・
ケイは女の人なんだから、男の人と付き合う方がごく自然だし、それが普通のことなのに、それが現実になってしまったらと思うと、あたしは、息が止まるほど苦しい。
苦しすぎて、心がズキズキして、泣きたくなる。
人通りがほとんどない通りに、あたしとケイの二つの足音だけが響いていく。
あと、もうちょっとでマンションに着いてしまう・・・
やだよ・・・
ここで別れたくないよ・・・
こんなズキズキして苦しい気持ちのまま・・・
離れたくないよ・・・
そう思った時、あたしの唇は、何の意識もしないうちにケイを呼んでいた。
「ケイ・・・」
「ん?」
ケイは、コートのポッケに両手を入れたまま、いつもと変わらない様子で、あたしを見る。
あたしは、うつむいて自分の足先を見つめたまま、ほんとに、子猫が鳴くみたいな小さな声で、こう聞いてしまった。
「あの・・・あの人・・・」
「ん?ああ、ガクのこと?」
「う・・・うん・・・・あの・・・」
「うん?」
「あの人って・・・・ケイの部屋ある写真に写ってた人、だよね?」
「そうだよ」
ケイはさらっとそう答える。