BitteR SweeT StrawberrY
なんだか、ケイのプライベートを覗き見したみたいで、急に後ろめたくなったからだ。
だけどケイは、別に気を悪くした様子もなく、ちょっとだけ首を傾げると、フルーツ皿から苺を取る。
「ああ…あれ?」
「すいません…見るつもりなかったんですけど…目に入ったんで、思わずガン見しちゃいました…」
「いいよ別に。つか、然り気無く目に入る場所にあるし」
ケイは、苺を頬被りながら何の気もなくそんな事を言うと、ちらっと、あの写真立てを振り返る。
そして、あたしの瞳の中で、誇らしそうに、ちょっとだけ寂しそうに、微笑った。
「まぁ、彼氏と言うか…彼氏だった?」
「過去系…ですか?」
「そだね、過去系かな」
あたし、やっぱり悪い事言ったのかもしれない…
ぎゅうっと胸が痛くなって、あたしは黙った。
そんなあたしを見つめ返して、ケイはやけに優しい口調で言ったのだ。
「三年前に別れたんだ。でも、別に、お互い嫌いになって別れた訳じゃないし、むしろお互い好きのままだったから。だから…いいかなって思って、そのままにしてる」
「そう…なんですか…。
あ…あの…すいません、ほんと…立ち入ったこと聞いたみたい…あたし、空気読めない訳じゃないはずなんだけど…えと、なんか、気になっちゃって…」
「いいよ別に、気にしてないし。まぁ、オレこんなだし、結構誰だって、気になるとこかも」
「オレ…って…あぁ、そうですね…オレ…ですよね…
その写真の頃も、オレとか、言ってたんですか?」
「言ってたよ」
「え?!」
「普通に言ってた」
「あ、あんなに可愛いのに…一人称、オレだったんだ。なんか、びっくり…です」
「オレも空気読めるタイプだからさ、まぁ、一人称の使い分けは、ちゃんとするけどね」
ケイは愉快そうにそう言って、もう一つ苺をつまむ。
ロングヘアの頃から、自分を『オレ』って呼んでるのに、恋人はちゃんと男の人…
好きだったって言ってるし…
性同一性障害って訳じゃ、ないのかな…
考えても考えても、あたしにはさっぱり理解できない、ケイはほんとに不思議な人だった。
その日、あたしとケイは、夜中の12時を過ぎるまで話しこんだ。
ほんのちょっと前に知り合ったばっかりなのに、なんだか、変に楽しかったから、あたしも、いつの間にか、時間を忘れていた。
ケイは、話上手だった。
ついでに言えば、聞き上手でもあった。
あたしの他愛のない話しも、うなずきながらちゃんと聞いてくれた。
ケイは美人で、その上、なんかカッコよくて、話し方やその内容で、この人がすごく頭の良い人だってこともわかった。
あたしの目には、ケイが、何の欠陥もない、完璧な人に見えてきていた。
この人は、男の人とか女の人とか、そんなことを超越してしまうぐらい、素敵な人なんだなって、思ってた。
煙草の匂いと、お酒の匂い、そして、甘いストロベリーの香りが、広いリビング一杯に広がった頃、あたしは、時計を見て慌てて立ち上がった。
だけどケイは、別に気を悪くした様子もなく、ちょっとだけ首を傾げると、フルーツ皿から苺を取る。
「ああ…あれ?」
「すいません…見るつもりなかったんですけど…目に入ったんで、思わずガン見しちゃいました…」
「いいよ別に。つか、然り気無く目に入る場所にあるし」
ケイは、苺を頬被りながら何の気もなくそんな事を言うと、ちらっと、あの写真立てを振り返る。
そして、あたしの瞳の中で、誇らしそうに、ちょっとだけ寂しそうに、微笑った。
「まぁ、彼氏と言うか…彼氏だった?」
「過去系…ですか?」
「そだね、過去系かな」
あたし、やっぱり悪い事言ったのかもしれない…
ぎゅうっと胸が痛くなって、あたしは黙った。
そんなあたしを見つめ返して、ケイはやけに優しい口調で言ったのだ。
「三年前に別れたんだ。でも、別に、お互い嫌いになって別れた訳じゃないし、むしろお互い好きのままだったから。だから…いいかなって思って、そのままにしてる」
「そう…なんですか…。
あ…あの…すいません、ほんと…立ち入ったこと聞いたみたい…あたし、空気読めない訳じゃないはずなんだけど…えと、なんか、気になっちゃって…」
「いいよ別に、気にしてないし。まぁ、オレこんなだし、結構誰だって、気になるとこかも」
「オレ…って…あぁ、そうですね…オレ…ですよね…
その写真の頃も、オレとか、言ってたんですか?」
「言ってたよ」
「え?!」
「普通に言ってた」
「あ、あんなに可愛いのに…一人称、オレだったんだ。なんか、びっくり…です」
「オレも空気読めるタイプだからさ、まぁ、一人称の使い分けは、ちゃんとするけどね」
ケイは愉快そうにそう言って、もう一つ苺をつまむ。
ロングヘアの頃から、自分を『オレ』って呼んでるのに、恋人はちゃんと男の人…
好きだったって言ってるし…
性同一性障害って訳じゃ、ないのかな…
考えても考えても、あたしにはさっぱり理解できない、ケイはほんとに不思議な人だった。
その日、あたしとケイは、夜中の12時を過ぎるまで話しこんだ。
ほんのちょっと前に知り合ったばっかりなのに、なんだか、変に楽しかったから、あたしも、いつの間にか、時間を忘れていた。
ケイは、話上手だった。
ついでに言えば、聞き上手でもあった。
あたしの他愛のない話しも、うなずきながらちゃんと聞いてくれた。
ケイは美人で、その上、なんかカッコよくて、話し方やその内容で、この人がすごく頭の良い人だってこともわかった。
あたしの目には、ケイが、何の欠陥もない、完璧な人に見えてきていた。
この人は、男の人とか女の人とか、そんなことを超越してしまうぐらい、素敵な人なんだなって、思ってた。
煙草の匂いと、お酒の匂い、そして、甘いストロベリーの香りが、広いリビング一杯に広がった頃、あたしは、時計を見て慌てて立ち上がった。