BitteR SweeT StrawberrY
おばさんは、ヒステリックにこう怒鳴った。

「くわしく聞くもなにも!!あんた達ね!高校生にこんな高い服売りつけて、そんなに儲けたいの!?うちの娘は、来年大学受験を控えてるんですよ!
それを!親に隠れてバイトしてこんな高いものを!!
高校生にこんなもの売りつけるためにバイトさせるなんて!
一体どういうつもりですか!?」

それを聞いていたあたしの頭の中に、沢山クエスチョンマークが浮かぶ。
このおばさん、一体何を言っちゃってるのだろう???
洋服を買う買わないは、お客さんの自由だし、強引に売りつけるなんて、ここのお店の人たちは誰もしないはず・・・
それに、まるで、無理矢理どこかでバイトさせて買わせたかの様な言い方・・・

あたしは、なんだかムカっとしたけど、努めて冷静にこう返した。

「ここのお店のスタッフさんは、きっと誰も、お洋服を買いたいならバイトしてきなさいなんて、そんな強要はしないと思いますよ」

「なにをそんな白々しい!!!私を馬鹿にしてるの!?」

うん・・・これはダメだ・・・
話しにならなそう・・・
あたしは、さっきから黙ってうつむいている、おばさんの娘さんらしい女の子に目を向けた。

「あの、お洋服買っていったの、あなたよね?」

あたしがそう聞くと、女の子は、しばらく黙ってうつむいたまま小さく頷く。
あたしは、なるべく優しい口調で、言葉を続けた。

「ここのお洋服、可愛いよね?ちょっと高くても、頑張って買いたいなって思っちゃうよね?」

女の子は、またこくんって頷く。
そこに割って入ってくるおばさん・・・

「なんてこと言ってるんですかあなた!?うちの娘は、服なんかに興味がないわよ!!
国大に入るために真面目に塾に通って!それこそ私の言うことをきちんと守って、まっすぐに育ってきた素直な子なのに!
それなのに!塾をサボって黙ってバイトなんかさせて!
うちの子をそそのかしておいて一体どういうつもり!!?」

そそのかす・・・・???

あたしは、なんだか呆れてしまった。
このおばさん、全然、娘さんのこと判ってないんだな・・・
普通、このぐらいの歳の女の子なら、可愛い服とかに興味を持って当然なのに。
このおばさんは、娘さんが大人しいから、きっと、自分の考えを何でもかんでも押し付けてきたのかもしれない。

あたしも、ずっと、両親の意向とか気にして、自己主張なんてできなかった。
あたしにはなんとなく、親に逆らえないこの女の子の気持ちがわかる・・・
とりあえず、おばさんは無視しよう。
あたしは、もう一度、女の子に聞いた。

「バイトしてたこと、お母さんには黙ってたんだね?」

女の子は黙ってうつむいたまま。
でも、あたしは、とにかく冷静に、優しくと心がけて、女の子に話しかける。

「うーん・・・それはちょっといけないことだったかもしれないけど。
でも、あたし、すごいと思うよ。
頑張ったんだね?バイト?
お洋服のために、一所懸命お仕事したんだね?
すごく気に入ったお洋服だったから、これ着たかったんだね。
偉かったと思うよ」

あたしがそう言うと、不意に、女の子が顔を上げた。
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