犬との童話な毎日
「さ、さっきから何なのかしら、見知らぬ他人の貴方にお説教される筋合いは無いはずよっ」
「あら、お説教のつもりは無いんです。
始めてお会いしたんですもの、何の恨みもあるわけ無いですしね。
客観的に見て、ですけどね、先程のお話しの仕方じゃお嫁さんや、未来の可愛いお孫さんを心配している貴方の気持ちが伝えきれていないわ!勿体無い!」
や、思ってないだろそんな事。
これっぽっちも。
頭を横に振って熱弁を奮う母親に対して、心の中で突っ込む。
饒舌なお母さんに比べて、おばさんはお口を開いたり閉じたりして言葉を探しているみたい。
「だって、ねぇ。
人を大切に出来ない人って人にも大切にしてもらえないでしょう?そういう人の老後って、孤独で淋しいもんですしね。
言い方一つ、ですげど本当に言葉って難しいわぁ」
白い殺風景な病室の中で、お母さんの声のトーンが微妙に下がる。
おばさんも怒るべきか、何とも言えない様な顔をしていた。
用事があるから、とそそくさと病室を出て行くおばさんの背中を皆で見送る。
沙月ちゃんのベッドの上で寝そべる黒曜以外は。
『くくっ……小娘の母親は凄いな』
うるさいな……。
おばさんとお母さんの会話を聞きながら笑っていたの気付いてんだからね。