犬との童話な毎日

若干怯えたように見てくる視線を無視。
もうぱんぱんな沙月ちゃんのお腹に比べたら、良く分からない膨らみ。
お布団越しだからなのか、まだそんなに膨らむ時期じゃないのか。

「赤ちゃん、還たがってるんだって」
「ぇ?」
「そこに居たくないの」

だってこんな点滴してたって、ずっと安静にしてたって。

「きっとあなたを守りたいんだ」

母親に望まれないから。

「あなたが苦しんでるからだ」

前に、黒曜が言っていた。
じー、っと見てるけど何か見えるの?って聞いた時。
葉だ、って。
腹に子を宿した女は、腹から葉が芽吹く、って。
この世に生まれ落ちる時が近付くにつれて母の手に、蔦の様に伸びる葉。
でも母の心に居場所が無いのか、蔦が伸びずに腹の上に留まっている、と。


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