犬との童話な毎日

「あ、そーいえば」

ありがとう、とココアの缶をあたしの机に置きながら、悠が何かを思い出した様にあたしを見た。

「さっきの現国の時、何で急に笑い出したの?」

あー……あれね。

遠い目で斜め上を見て考える。

……うん、あれはまずかった。

数十分前の四時限目。

穏やかーな国語の先生がお経か、って位にこれまた穏やかーな声で教科書を読み上げていたもんだから、気が緩んでたんだよね。
机に頬杖ついて、今思えば絶対目も口も半開きだったと思う。

先生が教卓の横に立ったのと。
教卓の横で毛づくろいをしていた黒曜がおもむろに立ったのが、奇跡的なタイミングで。


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