犬との童話な毎日

動物ってお化け、見えるっていうよねぇ。

突然思い付いたことを、深く考えずに口にする。
ちらり、とそんなあたしを横目に見ながらリビングに入って来る、化け犬。

冷蔵庫から麦茶を出してコップに注ぐ。

「あたし以外の人ってあんたんとこ見えないじゃない?」

学校でも、家でも、どこでも。
黒曜を目で追うのはあたしだけ。

「でもやっぱり犬とか猫とかは違うの?動物ってさ、良く何もない空間、見てたりするって言うでしょ?」

『……いいや』

「へー、良く動物って幽霊とか見えるって聞くから、てっきり見えるかと…」

『いや、そっちじゃない』

「……ん?」

ぷはあ、と一気飲みしたコップをシンクに置く。
口元を拭いながら対面キッチンから出ると、テレビの前を陣取る黒曜の姿。

ここで空気を読んでテレビを点けないと、口うるさく催促されるんだよね。
亭主関白か。

『俺の事が見えるのは、小娘だけじゃない、と言ったんだ』

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