犬との童話な毎日
廊下から何かが教室へと入って来た気配がして、顔を上げる。
ゆったりとした歩調で歩く黒曜が、顔を上げて、濡れた黒い目と目が合う。
「……ねぇ、夢って、匂いする?」
「夢の中で?」
四メートルは離れているだろうに、黒曜の目はとても綺麗に見える。
歩を進める度に、揺れる光。
澄んでいて、いつも吸い込まれそうになる。
目が離せない程、綺麗な目。
本人(本犬?)にはそんな気持ち悪いこと、言わないけど。
「……すっごいリアルだったんだよね〜。今日のは匂いまでしちゃってさ」
「え?血の匂い?」
「…………なんでそうなんの」
横目で悠を見ると、んん?と可愛い笑顔。
「だってまた立花が、お犬様のランチになったんじゃないの?」
あ、それ違う。