犬との童話な毎日
顔を上げるのが怖いんですが。
だらだらと内心、冷や汗をかいていると、ベッドの斜め前。
あたしの机の椅子に腰掛けた。
細身の体だけれど、決して女性的ではない体が。
「……あのー……」
ついつい声をかけてしまったのは。
「引き出し、開けないで欲しいのですが。……あっ、それは触らないで……それも手帳だから」
興味深々に、机のあちこちを探り始めたから。
え、なんなのこの人。
女の子らしいものがイマイチ好きじゃないあたし。
親に買ってもらったのは、シンプルな木目調の机と椅子だ。
けれど、いつも見慣れたあたしの物を、数時間前に会ったばかりの男の人が使っている光景は、何だか不思議で。