犬との童話な毎日
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甘かろう。
甘かろう。
花の蜜は甘かろう。
<<おい、手抜きすんな>>
<<長老様に怒られるぞ>>
あの人間の持ち物に。
我等で蜜を贈ろうぞ。
<<もう疲れたよ。ここで良くね?>>
<<駄目だって。持ち物の上に乗せろ、って女王様からも言われただろ>>
<<あ、あいつも入り口に置いてる>>
生命を潤す蜜を贈ろうぞ。
そんな蟻たちのささやかな会話は---。
残念ながら人間の耳には届きませんでしたとさ。
誰にも知られることのない、小さな小さな恩返し。
ちなみに。
雑草の花の蜜でべとべとになった上履きは、翌日も使用不可能となったのでした。