犬との童話な毎日
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ふ、と風を感じた気がして、目を開ける。
霞んだ視界に何度かゆっくりと瞬きをする。
視界に広がるのは、薄っすら明るい天井。
ああ、ここは。
あたしの部屋だ、と声にならない声で呟く。
ぼんやりとしていると、何かが動いた気がした。
「……あれ?……帰ってたの。おはよ……」
顔を向けると、黒曜が机の上を歩いているところだった。
茶色い毛玉が、目を擦りながら体を起こすあたしを、じっと見る。
吸い込まれそうな程の、漆黒の瞳。
狼、みたい。
しばらく無言でいたかと思うと、ふい、と顔を逸らして。
そこに座り込み、尻尾をくるりと体に巻き付けた。