犬との童話な毎日

***

≪明日、退院するよ≫

そんな連絡に気付いたのは、帰ろうとスクバを机から持ち上げた時。

≪りっちゃん。今までお見舞い、何度もありがとう≫

そして可愛いスタンプ。
それらに目を走らせながら少しの間、考える。

「あれ?八坂、どーした。早くしねーとアイス売り切れるぞ」

そう言いながら振り返る高城に、悠も廊下に踏み出していた足を止める。

二人が並んで、あたしを見るから。

「……ごめんごめん。行こ」

スカートのポケットにスマホを捻じ込みながら、誤魔化すように笑ってしまった。
歩き出した二人に、ぱたぱたと小走りで追い付く。
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