犬との童話な毎日
明日で退院だろうけど。
沙月ちゃんも退屈だろうし。
あたしもアイス食べたあと、用事もないし。
……悠と高城がカラオケー!とは騒いでたけど、あたしはイマイチカラオケの気分じゃないし。
少し道をいつもと変えるだけで帰り道、みたいなもんだし。
色々言い訳を重ねて。
足を向けたのは沙月ちゃんの入院する産婦人科。
「いらっしゃい、りっちゃん。明日退院だから良かったのに」
でも嬉しい、ありがとう、と笑ってくれた大好きなあたしの従姉妹。
「明日からは、いつ産まれても良いんだ。どきどきしちゃう」
愛おしそうにお腹を撫でる手は、きっと無意識。