犬との童話な毎日

高校生のあたしには。
と言うか、彼氏すら出来たことのないあたしには、まだまだ未知の世界。

「産まれたら真夜中でも教えてね」

こんもりとしたお腹の部分に、そっと手を乗せる。

あたしの目にも、黒曜みたいに葉っぱが見えたらなぁ。
見てみたいな、生命の葉っぱ。

目を細めても……うん、やっぱりあたしには見えない。

「真夜中でも良いの?なら、ひろ君から送ってもらうね」

ありがとう、と笑い返すと。
点滴を付けた手で、沙月ちゃんがあたしに手を伸ばしてきた。

「ねぇ、りっちゃんなんか疲れてる?」
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