犬との童話な毎日

パイプ椅子に腰掛けているあたしの前髪をそっと撫でる。

「うーん、なんか先生に怒られたとか?」

何かあった?と沙月ちゃんが首を傾げる。

「ううん、怒られてもないし疲れてもないよ?何で?」

心配してくれてるっぽい内容なのに、沙月ちゃんがふと笑った。

「なんか喧嘩したあととか、叔母さんに怒られたときみたいな顔してるから」

長い付き合いの沙月ちゃんならではの言葉だ。
我が儘放題の小さな頃から、あたしのことを知っている。

でも、残念ながら心当たりがあたしにはない。
落ち込んでも、悲しくも、悔しくもなんともないんだ。
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