犬との童話な毎日
曲がり角を行けば、あの枝垂れ桜が見える。
でも今日は暖かいからかな。
春の匂いはもう感じない。
感じるのは土っぽい匂い。
ああ、そう言えば何日が前にここを通った時、黒曜がもう時期終わる、って言ってたっけ。
その言葉を聞いていなかったらがっかりしてたかも。
それだけ、あたしはあの枝垂れ桜が気に入っていたから。
ほら、やっぱり。
角を曲がって、見えた桜の木にゆっくりと歩み寄る。
所々黄緑の、新しい葉が芽吹いている。
桜の花は、ほぼ付いていない状態だった。
何となくそうかな、とは思ってても。
「……淋しいな……」
もっと何度も来れば良かった。
あの桜が咲いているうちに、毎日でも。