犬との童話な毎日
どれくらいそうしていたのか。
お互い、最初に交わした言葉以外は無言で。
ただ静かにその木を見上げていた。
その時間はむしろ苦ではなくて、いつまでもそうしていられる気がしていたけど。
すっかり薄暗くなって、逢魔が刻というものも超えた頃、あたしはその場に背を向けた。
今日の夕ご飯は何だろう。
お肉が食べたいなー。
『おい、どこにいく』
二歩、三歩と歩き出したあたしの背中に掛けられた言葉に、振り返る。
「…………どこって。家に帰るんだけど」
もう暗いし。
お腹も空いたし。
『……なんだ、お前は俺を迎えに来たわけではなかったのか』