犬との童話な毎日
もしかして、桜が散ったら黒曜も消えちゃうのかもしれない、って頭のどこかで考えてたから。
そのまま黒曜の反応を待たずに踵を返す。
いい加減、遅いってお母さんに怒られちゃう。早く帰らなきゃ。
今何時だろう。
歩きながら、スマホをスカートから取り出してホームボタンを押すと、途端に暗い中に灯る明かり。
やばっ。
もう七時になっちゃうじゃん。
急がなきゃ。
『……ペットを置いて行くなんて、冷たい飼い主だな』
足元から聞こえた声に、ちらり、と目線を落とす。
「……見付けてやっただけありがたいでしょ」
こいつ、ペットで納得したんだ、とどうでも良い事をちらりと浮かぶ考え。