犬との童話な毎日
ふん、と鼻を鳴らしながら、あたしに並んで黒曜が歩きだす。
ちらりと横目で視線を後ろにやれば、ゆったりと左右に揺れる尻尾。
「…………今日は帰るの?」
『用事は終わったからな。飼い主と一緒に帰ってやるよ』
何言ってんの、と喉元まで出かかったけど。
思わず小さく笑ってしまった。
「……しょうがないから、ペットが迷子にならないように一緒に帰ってあげるよ」
一人と一匹で帰る家路。
もしかしたら自分が思っているよりも、黒曜が居ない時間は寂しかったのかもしれない。
なんて、口には出せない気持ちにふと気付いてしまった、ある日の宵の口。