犬との童話な毎日
あのさ、確かに数学準備室の掃除を早く終わらせて、沙月ちゃんのところにお見舞いに行きたい、とは言ったよ、あたし。
沙月ちゃんも、りっちゃんならいつでもおいで、って言ってくれてたし。
「…………あのー。あたし一人で大丈夫ですから、お気遣いなく」
目の前のすらっとした背中におどおどと声をかける。
その人は、机に積み重なった教科書を本棚に差し込んでいて。
しかも、良く見れば年代順に並べ直してるし。
「……意外と几帳面」
「サボるな、小娘」
眉を上げて言うものだから、 小言が始まる前に慌てて机に歩み寄る。