犬との童話な毎日

ーーー久々に、俺の事が見える人間になど遭遇したな。
ーーーみ、みみみ、見えません!!
ーーーもう逃がさんよ。

そう言って、その犬は。
あたしの牽制の為に伸ばしていた手を、噛んだ。

と言うか、実際は噛んだけれど、その感覚はあたしには伝わって来なかった。

犬の顔は、あたしの手を擦り抜けていたんだ。
びっくりし過ぎて、声も出せずに腰を抜かしたあたしに犬が近付く。
びくり、と肩を揺らしたあたしの耳元に口を寄せて。

ーーーこれから世話になる。
俺の事は……黒曜(こくよう)と呼べ。

と言ったんだ。





「犬のくせに大層な名前……」
『あぁ?!』


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