犬との童話な毎日
それと同時に。
唇に感じる熱。
反射的にぱっ、と目を開ける。
視界いっぱいに広がるのは。
「…………っ!」
睫毛が触れそうな位置で、斜めにあたしを射抜く漆黒の瞳。
「なっ……っ!!」
弾かれたように体を仰け反らせる。
そのまま距離を取ろうとしたけれど、それは叶わない。
あたしの首の後ろを黒曜の手が、まるで掴むようにしたから。
心臓が痛いくらいに跳ねる。
なに、なんで。
なにがあったの今。
「……な、に」
なんで?って聞きたかったけれど。
頭も口も働かない。