犬との童話な毎日
黒曜が固まったあたしを見つめ続けるから。
何も考えられない。
ぐ、と髪の毛を鷲掴まれて、背の高い黒曜をまるで見上げるようにさせられる。
苦しい角度にはぁ、と口から吐息が出て、自分が呼吸を止めていたことに気付く。
落ち着いていれば、こんな強引なこと許さない。
それこそ噛み付いていたかも。
でも今のあたしにはそんな余裕はなくて。
そんな考えも浮かばない。
黒曜のあたしを見下ろすその瞳が、何を映しているのか。
見たことのない表情に戸惑うばかりで。
黒曜の手を振り払うことも出来ない。