犬との童話な毎日
苦しい角度に耐え切れなくて、思わず黒曜の胸元に手を伸ばす。
きゅ、と服を握り締めた瞬間、漆黒の綺麗な瞳が僅かに見開かれて。
ゆっくりと細められた。
切なそうにも見えるその表情に。
あたしはただただ戸惑うだけだ。
心臓が痛いくらいに忙しなく動いて、勝手に呼吸が浅くなる。
いつまでこのままなんだろう、と困っているあたしの目の前で。
黒曜がふいににやり、と笑った。
「お前のような小娘でも、そんな顔出来るんだな」
そのまま再び詰められた距離に驚いて、腕を突っぱねて体を離そうとしたけれど。