犬との童話な毎日
冬馬くん、と呼ぶ声に高城が振り向く。
「だって見てみろよこの顔」
やめろ、指差すな。
「…………六花、またあの夢でも見たの?」
眉を潜めて、二人してあたしの顔を覗き込む。
そんなに酷いかな。
いや、確かに朝鏡見たら酷かったけど。
「ちゃんと周り見える?」
「悠の唇に歯磨き粉付いてるのなら見えてるよ」
「えっ!嘘っ」
「嘘だけどね」
すかさず鞄からミラーが出てくる辺り、やっぱりあたしよりも女子力高し。
平坦な声のあたしに、高城と悠が顔を見合わせる。