犬との童話な毎日
慌てて横向きになっていた顔を机に突っ伏す。
机に当たっておでこがごん、って鳴ったけど気にしない。
「え。まさか具合悪いの?六花」
横から覗き込んだ悠が少し驚いた声を上げる。
「……なんで?」
「だって赤いよ。頰とか耳とか」
「あ、赤くないからっ」
えー、と悠の不満気な声に、大丈夫、と小さく返す。
違う。
顔なんて赤くないはず。
だってあたし、怒ってるんだから。
昨日の夜、勝手にあたしにキスして。
その上耳を噛むなんて!
……い、痛くはなかったけどさ。
例え軽くても、噛むなんて。
「考えられない」
飼い犬に噛まれるとか言うけど。
まさにそれ。