犬との童話な毎日

階段にはもう黒曜の姿はなくて。
当てずっぽうに階段を駆け上がる。
ばたばたと走るあたしに、すれ違う生徒が眉を顰める。

どこ行ったんだろう。
そもそも校舎にいるのかな。
外に飛び出して行ったんじゃないのかな。

あれ?
うちの高校ってこんなに広かったっけ?
もっと狭かったような……。

「ちょ……マジか。どこ行ったのよぅ」

はあはあと、肩で息をしながら小さく呟く。

階段を上がって空き教室を覗いて、廊下を走って。
階段を降りて特別教室も回って見て。
校庭も見に行って。
体育館も覗いてみて。

こんなんだったら悠と高城にくっ付いて行けば良かった。
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