犬との童話な毎日
時折すれ違う生徒達に聞こえないように小さく呟いて、声に出さずに唇だけで黒曜め、って罵る。
次どこ探すかなー。
体育館に背を向けて、渡り廊下へと足を向ける。
苛々しながら頭をわしわしと掻いたときだった。
『小娘。俺を呼んだか?』
とん、と背後から聞こえた気がした。
どこにでも、それはそれはしなやかに降り立つから、音なんてしなそうなのに。
いつも黒曜が降り立つ時は、頭に音が入り込んで来る気がする。
振り返ると、渡り廊下の端。
腰の高さのコンクリートの壁に、黒曜がちょこん、と座っていた。
『……俺の名前を呼んだのか?』