犬との童話な毎日

昨日、猛スピードで帰宅して息も絶え絶えになったあたしは、リビングソファに座るお母さんの隣りに鎮座する犬に倒れそうになった。
お母さんにも見えず、お父さんにも見えず。
追い出し方も分からないし、部屋から締め出したつもりでも、何時の間にか机や、ベッドに寝そべっていて。

「ホント、勘弁なんだけど。
……しっしっ」

溜息と共に、追い払う仕草を見せ付けてみる。
けれど、肝心の黒曜は尻尾を一振りさせただけ。

『戯れ言は聞き飽きた。
はよ用意をしないか小娘』
「……何の用意よ」
『久々にあの木から離れられた。
違う場所が見てみたい』


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