犬との童話な毎日
黒曜は、時折こうやって姿を消す事がある。
気付けば部屋や、教室、あたしの周りから居なくなっていて、いつの間にか隣りに居たりする。
だからいつもはあまり気にしないんだけれど、何となく。
何となくあたしもさっきの黒曜の様に、夜の窓辺に寄った。
何か見えるのかな。
さっき、黒曜が言った様にあたしの視野が広がったのなら。
窓を開け放して、部屋に吹き込む夜気を吸い込む。
4月の夜の空気はまだ冷たい。
外の明かりが灯る家々。
夜道を街灯が照らす。
夜空に浮かぶのは、三日月に数える程の星達。
「……何も見えない」
少しだけ残念な気分になりながらも、あたしは夜空を少しの間、仰ぎ見ていた。