犬との童話な毎日

『……ほお、俺の事を化け犬呼ばわりとは、良い度胸しているじゃないか』

その声は更に低くなって。
あたし、内心冷や汗。

「だ、だってあんたっておじさんの近くに居る事が多くない?」

『俺が言っているのはそっちじゃないんだがな』

とん、と窓枠から大きな体躯ながらに軽い動作で降りると、ゆっくりとあたしに近寄って来る。
黒く濡れた目が、真っ直ぐにあたしを射抜いて、無意識にパジャマ替りのパーカーの胸元を握り締めた。

あんな事言うんじゃ無かった。
や、やっぱり怖い!

ベッドの上をじりじりと下がって距離を取ろうとしても、黒曜が近寄って来る方がずっと早くて。
もうあたしは格好悪いんだけど半べそかいていたと思う。

背中に壁が当たる頃には黒曜はもう目の前だった。

「ま、まさか噛まない、よね?」

『さあな、小娘にはお仕置きが必要だからな』

わわわ、笑ってるーーー!!

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