犬との童話な毎日
「で、でも噛めないよ、ね?さ、触れないもんね?」
返事の代わりに、にやり、と口元が確かに笑みの形を描いたのを見て、堪らなくなったあたしは猛烈に土下座をしたくなった。
「す、すすすみませんでしたっ。ちょっとした冗談のつもりで……」
まぁ実際には、至近距離に黒曜が居たから壁に背中を貼り付けたままだったんだけど。
表情引き攣りまくりのあたしに、黒曜が無情にも顔を寄せて。
『なぁ、誰が触れないなどと言ったんだ?』
息がかかる程の距離、耳元で黒曜の囁く声がした。
そしてーーー。
「ひっ……!!」
あたしの喉元を舐め上げたんだ。