犬との童話な毎日

あたしもお母さんも、黒曜ですら。
身動きもしないで聞き耳を立てていた。
実際、黒曜が何を思っているかなんて分からないけど。

「本当に困るわねー、体が弱いと。
健康な赤ちゃん産んでくれないと困るんだけど、その辺は大丈夫なの?」

ぼそぼそと何か聞こえるのは妊婦さんの話し声かな。
このおばさん、なんかねちっこいな。
これが嫁姑、って奴?
なんか聞いてるだけで腹立つんだけど。

「あ、夕ご飯、久々に家族全員で外食でも行こうと思うのよ。
ヒロ君は今日はお見舞い来ないからよろしくね」

毎度毎度、本当に嫌なババア、と珍しく沙月ちゃんが汚い言葉で呟く。
隣のおばさんがお見舞いに来る度に嫌味を言っているのが、沙月ちゃんの言い回しで分かった。

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