犬との童話な毎日

何か他にもぐちゃぐちゃカーテンの向こう側で言っていたけど、頭に入って来なかった。
静かに立ち上がったお母さんに嫌な予感。
黒曜がその気配に振り返る。
その黒い目がきらん、と光った様な気がした。

あんた、お、面白がってない?

「ちょっ、何するの?
やめてよ?落ち着いて」

慌ててお母さんの洋服を掴んで小声で言ってみたけれど。

あぁ、やっぱり。

お母さんがしゃー、とカーテンを開け放して、舌打ち。
もう一枚、隣のベッドのカーテンがあったことに苛ついた様だった。

意外とうちのお母さん、お上品なタイプでは無いのだ。

「失礼しますねー」

今度こそは、と力いっぱい引いたカーテンが揺れて黒曜の体にかかる。
もちろん擦り抜けて行ったけれど。


< 98 / 311 >

この作品をシェア

pagetop