お蔵入り書庫
 
 12月23日、午後11時。

 バイトを終えてアパートに戻ると、思った通り部屋は暗く静まり返っていた。

 タイミングを見計らったかのように携帯に着信があり、くたびれたジーンズのポケットから取り出してみれば1件のメールが届いている。


『おそくなふごめん』


 誤字を訂正する余裕も無いくらい、忙しいのだろうか。

 自慢じゃないが、俺は高校卒業すら危うかったバカだから、でっかい病院で働く研修医ってのがどんだけ大変なのか見当もつかない。

 昼夜関係なく出勤して、たまの休日も呼び出しが掛かったりして。

 アイツが家に居られる時間は、極々僅かだ。

 つーか、医者と研修医って何が違うんだよ。

 直接聞けばいいんかも知れないけど、アイツの話は長くて難しいからイヤだ。

 おかげで、俺は恋人の職業をよく理解していない。

 こんな事になるなら、医療系のドラマでも見ておくんだったかも。

 部屋着に着替えてテレビをつけるものの、こんな時間帯にやってる番組といえば、微妙なバラエティとか、少しエロい雰囲気のドラマ……。

 そんな内容じゃなくても、ドラマは余り好きじゃないから見ない。

 結局テレビは消して、1人淋しく夜食にありつく。

 何かを作る気にはなれなくて、コンビニで見つけた新商品のカップ麺を啜る。

 そういえば、アイツも職場にカップ麺持って行ってたな。

 俺が買って来たヤツを勝手に持って行ったんだ。

 今頃アイツも、1人で喰ってんのかな……?

 そんな風に考えたら、なんか淋しくなってきた。

 俺じゃなくて、あいつのことが。

 職場で1人淋しくカップ麺なんて、淋しいにも程があるってんだ!
  

……to be continued later!



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