お蔵入り書庫
バレンタインデーの日。
中学からずっと同じクラス、同じ部活に所属している弓香から、俺がチョコレートを貰ったのを切っ掛けに成都の気持ちを知り、勢い余って告白。
そして、俺と成都はどうにか恋人という関係に収まった……訳で。
『──先日行われた陸上記録会にて、陸上部所属の、2年3組、萩原清治[ハギワラキヨハル]くんが見事3位入賞。来週の朝礼で表彰されます──……ん?』
……ん?
『──あ。清治おめでとー。さすがは俺の親友だね。次は俺の為に1位取ってきてね。えー……と、学校からの連絡は以上です!』
……あ、の……ッ、馬鹿!!
全校放送で、何てことを……ッ!!
『それでは最後に、2年8組、坂本真理チャンからのリクエスト曲を──』
スピーカーからは軽快な音楽が流れ、教室内にはいつもと変わらない喧噪が広がっている。
成都のあんな発言を気にするヤツなんて、ここには居ない。
居ないけど……!
全校放送で、アレは、いくら何でも……!!
机に突っ伏して、もやもやする気持ちをどうにか堪えていると、誰かが近付いてくる気配がした。
「"俺の為に1位取ってね"」
「うわっ!?」
「耳まで真っ赤ね」
「……弓香」
弓香は、俺と成都の関係を知っている唯一の人物だ。
そして、弓香は俺を──好きだった。
弓香は、俺と成都の気持ちを知っていて。
成都は、弓香の気持ちを知っていた。
軽く三角関係ってヤツだったのを俺は全然気付きもせず、勿論、チョコを貰っても弓香の気持ちに気付けなかった。
俺には、成都しか見えていなかったから。
弓香に対して、友達としても男としても、酷いことをしていたんだと漸く気付いた。
だけど弓香は、そんな俺の気持ちを後押ししてくれた。
弓香のお陰で、俺と成都が恋人同士になれたと言っても過言じゃない。