ふくれっつらな俺のプリンセス
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空っぽだった俺の手は柔らかくて温かな掌に包み込まれる。
「…学クン…学君大丈夫?」
女性にしては少し低めでハスキーな耳触りの良い声が俺に呼び掛け
靄(もや)が掛かったみたいにぼんやりとした意識が段々覚醒していくが…
今の状況を全く呑み込めない。
ベットの上に裸の俺と知らない女(ひと)
…いや正しくは知り合ったばかりの女。
「…あ…かりさん…どうして…」
そう呼びかけた俺の声は戸惑いに揺れ擦れた小さな声しか出ないから彼女に届いたかさえ自信がなくて、
一体全体どうしてこんな事になったのかが、
本当に分からなくて頭を抱え込み悶絶したくなる現状を如何にか堪えた。
そんな俺に怒った様子も見せず何故か俺の顔に掌を当てて微笑むあかりさん。
「寝てても涙は流れるのね?」
思わずハッと息を飲み、自分の顔に手を当てるとそこは冷たく濡れている事が分かり咄嗟に下を向き顔を隠す。
涙に濡れた顔を見られてしまった恥ずかしさ…
そして何も覚えていない事の疚しさで、顔が上げられない。