人気女優がタイムスリップ!? ~芸能界⇒島原⇒新選組~
でも、もう慣れました。


一週間と少し。ほぼ毎日酒屋に来ていたから、そのたびに話をコロコロと換えられているのでもう慣れました。


「あっ!
乙葉ちゃんに、酒屋の主人が篠笛を吹くって言ったら、今度聞きたいなっ。って言ってましたよ。」


「それは光栄だね。
彰が可愛いっていうんだから、その子も彰なみに可愛いのかな?」


ナルシストなのか、俺様なのか、紳士なのかよくわからない飛鳥さん。


「私の可愛さはともかく、乙葉ちゃんはとってもかわいいですよ。」


「否定はしないんだね。
彰のそういう所も俺は好きだよ。」


自分で可愛いっていうつもりはないけど、これでも人気女優やってましたから。
人気女優がブスだったらどうしようもないでしょ。


「飛香さん、何かたくらんでます?」


「どうしてそう思うんだい?」


最近、やっとわかるようになってきた飛鳥さんの表情の変化。


「勘ってやつです。」


「女の勘はよく当たるっていうしね。
ま、君がそう思うならそうなんじゃない?」


「否定はしないんですね。」


「君と同じさ。
男というもの、常に夢を見る生き物だろ?」


「飛香さんに夢があったなんて驚きです。」


私はたまに思う。
飛鳥さんみたいな人が何で酒屋の主人をしているのかを。


「酷い言い様だね。
俺も夢は持っているよ。」


「少し聞いていいですか?
飛鳥さんって何で酒屋の主人をしているんですか?」


「君と一緒で内緒だよ。
人には言えない事情ってものはだれにでもあるだろう?
もちろん、君にもね。」


飛鳥さん、まさか……ね?


その時の飛鳥さんは、どこか妖艶でこと先をすべて知っていそうな顔をしていた。
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