人気女優がタイムスリップ!? ~芸能界⇒島原⇒新選組~
「プッ、
す、すみません………
まさか、女の子に説教をされるとは思ってもみませんでしたので……」


沖田さんは、いまだに笑いそうになるのをこらえ、声を震わせながらそう答えた。


「……………??」


私は、予想外の答えに無言のまま首をかしげて沖田さんが笑い終わるのを待つ。


「あなたを入れて3人。
これが何の数かわかりますか?」


ひとしきり笑い終わったようで、唐突にそう聞いてきた沖田さん。


「えっ??」


「僕がさっきみたいに弱音を吐いてしまった人の数と、それを彰さんの言われたことと同じように返された数ですよ。……それを言ったのは、土方さんと近藤さん。それに彰さんです。」


「えっ!!」


今度は別の意味で驚いた。


近藤さんはまだわかる。けれど、あの土方さんが私みたいに沖田さんを花にたとえながら説教をしたと??


「ね、びっくりするでしょう?
僕も言われた時は驚きましたよ。」


私は疑問が顔に出ていたのか、聞く前に答えてくれた沖田さん。


すると、悪戯をした幼い子供のような表情で捕捉を付け加える沖田さんの顔は、ある意味輝いていた。


「あれでも土方さん、
“豊玉発句集”っていう句集に俳句を書くのが趣味なんですよ!」


「土方さんが俳句!!」


「えぇ、例えば………

梅の花 一輪咲いても 梅は梅
しれば迷いしなければ迷わぬ恋の道
春の草五色までは覚えけり

とか!」


「ブフッ!!
へ、下手くそ!!」


私たちは、まるで修学旅行の夜の恋バナの様なノリで、おもに土方さんの句集を題材に会話をして、さっきの雰囲気なんてなかったように、夜は更けていった。


だけど、私は確かに沖田さんとの仲が深まっていると確信していた。
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