人気女優がタイムスリップ!? ~芸能界⇒島原⇒新選組~
「………ふあぁっ………」


パチッ!!


『なんか変な夢見た、回想も入ってたし………』


私は真夜中に目を覚ました。


起きたらあたりは真っ暗で、障子の隙間から差し込む月明かりだけが頼り。手足を頼りに縁側に移動する。


「桜の木?」


そこには、島原でお世話になっていた店に生えていた桜の木にそっくりな木があった。


懐かしくなった私は、これからの不安を紛らわせるようにその木に近づいて表面に触れる。


「なんか、
今日1日で寿命10年短くした気分………
あ、私に寿命なんてないんだっけ。」


私は、桜の木があまり好きじゃない。


だって、私が必死になって隠して、ごまかしている自分の弱い部分を全部見透かされている気がするから………


桜の木の前じゃ、私の薄くて脆い仮面なんて意味がない気がするから………


「でも、私は泣かないよ。」


これは、私なりの誓い。私なりのポリシー。こんな形で自分の気持ちを口に出さないと、泣いてしまいそうになるから………


「絶対に、絶対に泣かないよ………」


さっきの沖田さんを見て、沖田さんの心の声を聴いて思ったんだ。


こんな強くてかっこいい人でも、心に闇があるんだって。


それは、私もしかり………


忘れていた自分の心をまた思い出してしまったんだ。


今更、翔にとやかく言う気はない。翔は翔で後悔してるみたいだから。


私にはポリシーがある。それは“昔を引きずらない、だけど忘れるな”“泣いていいのは嬉しいときだけ”このポリシーを心にとめて私はこの時代を生きてきた。


だから、くよくよするのは今日まで!


今はとりあえず満月でも見ようと、桜の木に背中を預けお尻をついて座った。

< 77 / 137 >

この作品をシェア

pagetop